『自己愛性パーソナリティ障害』正しい理解と治療法 / 市橋秀夫 監修
自己愛性パーソナリティ障害という病気を、最も分かりやすく解説した本だと思います。
前作の『境界性パーソナリティ障害は治せる』と同様、各内容は、基本的に1見開きにまとめられていてとても読みやすいです。
また挿絵も豊富だし、受験参考書のように特に重要な部分にはアンダーラインが引いてあったり、難しい医学的用語などは使わずにとても分かりやすい単語で表現されています。
また監修している市橋先生は『臨床の鉄人』と呼ばれているとか。
治療の経験も豊富なのだと思いますが、実例もとても分かりやすく、しがらみだらけの日本社会の中で起きやすい事象を取り上げていて、とても親しみが持てます。
日本で手に入るBPD関連の書籍の中には、よくこの世界の先進国であるアメリカの本を和訳した本があります。しかし、そういう本を読んでいていつも思うのは、アメリカはドライな訴訟社会ですから、日本文化で発生する人間関係の問題とはイメージが合わないということです。
ホームパーティに招かれてダンスがうまく踊れないのが恥ずかしくて…とか、離婚訴訟に向けて証拠を集める…とか、日本ではなかなかあり得ないシチュエーションが多いのです。
逆に、長男の嫁だから家を守らなければ…とか、社宅では隣の部長の奥さんに強く言えない…とか、日本独特の人間関係がBPDという病気でこじらせてしまうことも多いと思うのです。
この本ではそういう『ちょっとあり得ない』という部分がなく、例題もとても身近で理解しやすいと感じました。
境界性…が、他者との人間関係の障害ならば、自己愛…は自分自身の自尊心に関する障害です。
原因や症状も似通っていて明確に区別出来ないように私は感じています。
しかし、治療法も同じであるために特に病名で区別する必要はないのではないでしょうか?
要は本人がどちらで理解した方が、解放に向けて心の中を整理しやすいか?というだけだと思います。
配偶者、恋人など身近な人がBPDではないか?と思っている方、またはご自分がBPDではないか?と思われている方にお薦めです。
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